研究課題
特別研究員奨励費
【1. 緒言】今年度は、トポロジー変換という「高分子のかたち」に立脚した新たな刺激応答性分子システムの開発とX線構造解析を行った。具体的には、光開裂性部位を有する環状ポリ乳酸の光開裂により環状から直鎖状へのトポロジー変換を行い、ポリ乳酸ステレオコンプレックスの結晶厚および融点を制御した。また、環状ポリ乳酸を含むフィルム試料の引張試験を行った。ポリ乳酸ステレオコンプレックスは、光学異性体であるポリ-L-乳酸(PLLA)とポリ-D-乳酸(PDLA)からなる結晶で、どちらか単一の結晶と比較し融点が約50℃上昇することが知られている。【2. 具体的内容】昨年度までに、同じ分子量3000程度のポリ乳酸でありながら、トポロジー変換による環・直鎖の切り替えに伴いポリ乳酸ステレオコンプレックスの融点が40℃以上も低下および再上昇することを明らかとした。今年度は、分子量12000程度のPLLAおよびPDLAにおいても、環状構造の導入に伴い27℃もの融点の低下を観察した。分子量1200程度のPLLAおよびPDLAにおいては、環状構造の導入に伴いステレオコンプレックスが観察されなくなるなど、環状構造の効果が幅広い分子量で発現することを明らかとした。さらに、光開裂性環状ポリ乳酸のトポロジー変換前後のX線結晶解析の結果、融点の変化は環状構造の導入・変換に伴う結晶厚の減少・増大に由来することも明らかとした。一方、環状PDLAをブレンドしたポリ乳酸ステレオコンプレックスフィルムを作成し引張試験を行ったところ、環状PDLAをブレンドしたフィルムと直鎖状PDLAをブレンドしたフィルムでは強度が有意に変化した。【3. 意義・重要性】本研究は、トポロジー変換という新奇コンセプトを材料設計に応用した初めての例てある。①高分子鎖1本につき、たった1か所の反応で高分子鎖全体の性質が変化するだけでなく、②刺激の前後で化学構造や分子量は保持されるという特徴を有しており、添加剤の使用や分子量・高分子化学構造の変化といった手法を用いないために工業的にも注目される方法論になるものと期待される。また、本研究が環状高分子を含有する試料の引張試験を初めて行った例である。
(抄録なし)
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