研究概要 |
準結晶やその近似結晶は、多重殻構造からなる正20面体対称クラスターを局所構造に有する金属間化合物である。本研究は、Cd6Ca及びCd6Ybで発見された12個の希土類元素Mで構成される正20面体クラスターに内包された原子群が、規則-不規則化することによって起こる構造相転移の全貌を明らかにすることを目的として研究を行った。具体的には、最初に構造相転移の報告のあったCd6CaとCd6Ybと同型構造の、4個のCd原子からなる4面体を内包したM正20面体クラスターの多重殻構造をもつ正20面体対称クラスターが体心位置に配置された構造を持つ、16種のCd6M(M=希土類元素)立方晶群やそれと同型構造をもつCd系準結晶やAg系準結晶において、電気抵抗率測定または透過型電子顕微鏡観察などを用い、相転移の有無の探索、相転移後の超格子構造の解明を行った。 1)本年は、Cd6M(M=Ho, Er, Tm, Lu)を中心に試料作製条件の再調整・探索後、主に透過型電子顕微鏡による観察を行った。100K付近で透過型電子顕微鏡観察を行ったところ、新たにCd6M (M=Ho, Er, Tm)において電子回折法により超格子反射の生成を観察し、またそれらが低温では2倍周期のC底心単斜晶に構造相転移することを明らかにした。 また、Cd6Luにおいては作製条件を調整しても構造相転移は100Kでも観測されなかった。 2)Cd6Mと同様に、M正20面体クラスター内に4面体を有するAg-In系準結晶において、試料作製条件の探索及びその構造相転移の有無の探索を行った。 室温において特異な対称性をもつ収束電子回折図形が得られたが、まだ低温域や高温域での構造相転移の有無の判別には至っていない。
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