研究課題
特別研究員奨励費
本研究では、天然物の中において異色の美しい対称性を有するテロメスタチンに生命が利用できていない潜在的機能が隠されているのではないかという期待のもと、その構造モチーフを戦略的にチューニングし、新機能を開拓している。前年度までに、「テロメスタチン誘導体のカラム状自己組織化」、「カラムナー液晶相形成」、「カラム状構造体の大スケールでの電場配向」、「リチウムイオン伝導性の発現」、「フラーレン誘導体との混合」を達成していた。このうち、「フラーレン誘導体との混合」についてはその相互作用の様式、得られた混合物の物性が未知であったため、平成25年度はこのトピックに重点を置き、研究を行った。本研究で開発したテロメスタチン誘導体と混合したフラーレン誘導体は、C60、PC61BM、C70、PC71BMの4種である。大環状分子とフラーレン誘導体が交互に一次元状に集積し、一次元導電パスを形成することを期待し、モル比1:1でこれらを混合したところ、いずれのフラーレン誘導体においてもヘキサゴナルカラムナー液晶相が安定化されることを示差走査熱量測定、X線回折測定によって確認した。一般にフラーレンと液晶分子との混合は液晶相の不安定化を招くことが知られており、本系においては大環状分子のお椀型構造がフラーレンを包みこむことで液晶相の不安定化を防いでいると考えられる。また、液晶相が安定化されたという事実は、カラム内でフラーレン同士のファンデルワールス相互作用が働いていることを示唆している。時間分解マイクロ波伝導度測定法により、得られたフラーレン混合液晶の電荷輸送能を検討したところ、期待通りカラムの軸方向に電子をより効率的に通すことが明らかとなった。また、電場の印加によってこのカラム方向を自在にコントロールできることも明らかとなった。これは外部刺激によって電荷輸送能を調節できる新たな有機半導体へと展開できる。
(抄録なし)
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