研究概要 |
1.キャビテーションを想定した気泡崩壊 キャビテーションは,生体内において気泡崩壊を,気泡を導入することなく,利用する方法として広く用いられており,加えて,これまでの基礎的な研究よりその内部において非常に高温・高圧な場や高速な液体ジェットが発生していることが考えられ,気泡崩壊を利用した医療の最適化条件を得るために,それらを定量的に評価することが重要となる.本年度では,界面における相変化の取り扱い手法の検証として,Sucking interface問題等を扱い,手法の妥当性を示した.次に,キャビテーションにおける気泡崩壊を想定した軸対称二次元計算として,大気圧下で球形に収縮している気泡と衝撃波との干渉を解析し,以下の知見を得た.(i)初期気泡体積の数万分の1まで小さくなる気泡の非球形崩壊を,衝撃波や界面微細構造,非平衡相変化を考慮した上で計算し,Klaseboerら(2007)の実験結果と良好に一致する結果(気泡重心の移動量,衝撃波圧力値)を得た.(ii)非球形気泡崩壊においても,相変化の影響により,気泡内空間平均温度ならびに圧力の最大値が高くなる.(iii)衝撃波の波形の影響として,衝撃波に続く負圧の作用により,気泡の衝撃波進行方向への非球形崩壊(ジェット形成等)は弱められ,気泡挙動は中立崩壊に近づく. 2.生体壁面近傍での気泡崩壊と壁面内への薬剤輸送 Kodamaら(2009)により細胞内への薬剤の直接導入医療の効率向上に気泡が有用であることが示されているが,その機構は理解されていない.本研究では,導入に関連すると考えられる気泡崩壊時の衝撃波やジェット,渦流れを直接計算した上で,それらに駆動される壁面変形および気泡周囲の物質の輸送過程を計算した.柔らかい壁面近傍では,渦流れにより壁面が変形し,表面積が増加することにより,硬い壁面に比べて,薬剤の壁面への導入量が増加した.
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