研究課題
特別研究員奨励費
地球の大気は、他の惑星の大気に比べて極めてユニークな構造を持ち、オゾンはその中心的な役割を担っている。一般に同位体比は、その物質の起源物質、生成環境や反応過程、生成後の変質、消滅環境や反応過程、といった複雑な履歴を記録しており、物質循環のトレーサーとして用いられる。オゾンの酸素同位体比は大気中の他の酸素化合物の中で最も大きく、大気中の物質循環を理解する上で、オゾン同位体比の振る舞いを把握することは極めて重要である。これまでのオゾン同位体比の観測は気球を用いたその場観測が主流で、大気をグローバルな範囲で包括的に観測した例はない。本研究では、超伝導サブミリ波リム放射サウンダー(SMILES)の観測スペクトルデータを用いて、オゾン同位体比のグローバル分布を明らかにし、その形成メカニズムを理解することを目的とする。SMILESのようなリモートセンシング(リモセン)観測では、分子存在量といった物理量は観測スペクトルから反転解析によって求められる。本研究では、この反転解析手法をオゾン同位体比の導出に特化した。特に、先験値情報にオゾン同位体比の知見を導入し、リモセン観測では弱点であった観測確度の問題を解決した。この解析アルゴリズムによって導出されたオゾン同位体比の高度分布は、高度約30~40kmでは高度とともに上昇する傾向を示した(過去の観測と一致)。更に、未踏領域であった高度40km以上におけるオゾン同位体比の観測に初めて成功し、オゾン同位体比は成層圏界面(約45km)で極大となり、それ以上の高度領域では高度とともに減少することを明らかにした。本研究の成果は、オゾン同位体比が高度領域によってその振る舞いを変えることを観測によって世界で初めて明らかにし、オゾン同位体比研究に新しい知見を与えた。また、アルゴリズムの開発によって同位体比というより観測が困難な物理量の導出に成功し、リモセン観測の新たな可能性を示した。
(抄録なし)
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