研究課題
特別研究員奨励費
生体内においてタンパク質合成を司るリボソームはリボソーマルRNAと呼ばれるRNA(rRNA)とタンパク質からなる超分子複合体である。リボソームの生合成過程においてrRNAは様々な化学修飾を受けることが知られている。リボソームはすべての細胞において必須な分子機械であるが、その修飾に着目した研究は少なく、依然その機能や意義については未知な部分が多く残されている。当該研究員はバクテリアにおけるリボソームの新たな機能調節機構の発見を目指し、rRNAの転写後修飾の研究を行った。当該研究員はシチジンの5位にヒドロキシル基が付加された5-ヒドロキシシチジン(ho^5C)に着目した。このho^5Cの興味深い点として、修飾率が100%ではないことが挙げられる。このことは細菌が修飾の導入されたリボソームと導入されていないリボソームを使い分けているという新たな可能性を示している。しかしその修飾率の調節および修飾の機能は依然わかっていないため、当該研究員はho^5Cの形成機構および機能に焦点を絞り解析を行った。まず当該研究者は鉄硫黄クラスター生合成がho^5Cの形成に関与していることを突き止めた。鉄硫黄クラスターを有するタンパク質の活性が細胞内の鉄イオン濃度に依存する例が知られているが、研究員はキレーターを用いた実験によりho^5Cの形成が鉄イオンの濃度に依存していることを突き止めた。この結果は環境中の鉄の枯渇、および再供給によりrRNAの修飾効率が変動するという興味深い現象を示唆している。鉄イオンが変動する環境の一つとして宿主の動物細胞への感染が挙げられる。実際、病原性細菌であるサルモネラ菌を用いた感染実験を行ったところ、修飾欠損株において宿主細胞への侵入性の上昇が観察され、ho^5Cが感染性を調節していることが示唆された。本研究はho^5Cの修飾率の調節機構、および機能の一端が明らかとし、さらには細菌がリボソームの修飾を介して、感染性をコントロールしているという新たな概念を提起している。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (3件)
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