研究概要 |
赤方偏移z=7銀河をケック望遠鏡の分光装置DEIMOSで観測したデータを解析した.その結果を論文にまとめ,国内外の研究会で発表した. 宇宙再電離がいつどのように起きたかは,現代天文学に残された謎の一つである.宇宙マイクロ波背景放射やクエーサーの観測結果から,宇宙再電離はz=6-11に起きたとされている.さらにz=6-7では,中性水素によって強く吸収を受けるLya輝線の強い銀河の個数密度進化を追う方法で調べられている.その結果,z=6から7にかけて,宇宙の中性度が大きくなったことが示唆されている.しかしこの方法では,銀河進化による効果を切り分けるのが難しいと考えられている.そこで本研究は,Lya輝線を強く放射している銀河の割合(f_Lya)をプローブにした.f_Lyaは,紫外連続光が明るいという遷択基準で時代ごとに選んだ銀河を分光観測することで求められる.宇宙がほぼ完全電離されているz=4-6におけるf_Lyaは先行研究で報告されており,その時間変化は銀河進化による影響を反映していると考えられる.その結果をz=7まで外挿したものと,z=7銀河の観測結果とを比較することで,z=6から7にかけての宇宙の中性度進化の有無を調べることが出来ると期待される. 申請者はz=7銀河の分光データを解析し,当時最大のサンプルからz=7のf_Lyaを求めた.その結果,z=6から7にかけ,f_Lyaが有意に小さくなっていることを発見した.これは,宇宙の中性度がz=6から7にかけて大きくなったことを示唆している.また,紫外連続光の暗い銀河ほどf_Lyaの減少幅が大きいことが分かった.このことから,z=7では暗い銀河の周囲の方が宇宙の中性度が大きいと考えられる.この研究の特に重要な点は,宇宙再電離の時期にとどまらず,その進行過程にまで考察を深めた点である.
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