研究概要 |
平成25年度は、視空間ワーキングメモリ(以下WM)独立仮説の検討と、空間WM保持における空間的注意の役割の検討を行った。 視空間WM独立仮説の検討 : 視空間WMは、空間情報(場所)と視覚情報(色や形)とでそのWMシステムが独立していると言われるが(Logie, 1995)、未だ決着はついていない(Luck, 2008)。特にWood (2011)はこの問題に関し、空間WMと視覚WMの二重課題を用いて網羅的な検討を行ったが、その中で空間WMと図形WMは独立でないと報告した。そしてこれは視空間剛独立仮説に反するものであった。しかし、Wood (2011)の実験には、空間WM刺激の呈示方法と、用いた行動指標において問題があった。そこで本研究ではその問題を解決した上で、Wood (2011)の追試を行った。計6実験の結果、一貫して空間WMと図形WMは独立であることを示唆する結果を得た。これは上記仮説を支持するものであり、この議論の決着に向けた重要なデータを提出したといえる。 空間WM保持における空間的注意の役割の検討 : これまで空間WMの情報保持を空間的注意が担うことを示唆する研究が、行動実験や事象関連電位(ERP)測定などによって行われてきた(Awh et al., 1998 ; Jha, 2002)。しかしながら行動実験ではその研究を追試できないとする報告もあり(Belopolsky & Theeuwes, 2009)、その矛盾の解決は急務だといえる。そこで本研究では、行動実験を用いてそれらの追試を行ったが、空間WM保持中には空間的注意の効果を観察できなかった。これはBelopolsky & Theeuwes (2009)の報告と一致する。しかしながら、実際には空間的注意が働いていたが、行動指標ではその効果を検出できなかった可能性もあり、ERP測定を用いてさらにこの問題を検討した。その結果、空間的注意の効果が観察された。これらの結果をまとめれば、空間四保持において空間的注意は関わっているが、行動実験によってはその検出は困難であることを示唆する。そしてそれ故に先行研究間で矛盾が生じた可能性がある。本研究はこの矛盾を解決し、今後の礎となるべき重要なデータを提出した。
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