研究概要 |
gpx1∆株は野生株と比較してオレイン酸培地で生育が低下することを見出している(Ohdate and Inoue, BBA, 2012)。昨年度、その原因を明らかにするためにDNAマイクロアレイ解析を行い、gpx1∆株では細胞壁の構成因子の発現が減少していることを見出した。減少していた細胞壁構成因子のうち、細胞壁マンノースタンパク質をコードするCCW12遺伝子をgpx1∆株に導入したところ、オレイン酸培地におけるgpx1∆株の生育低下を回復することを新たに見出した。gpx1∆株では、Ccw12のmRNAレベルだけでなく、細胞全体のタンパク質レベルでもCcw12の減少が観察された。Ccw12は翻訳後、ERとゴルジ体で糖鎖修飾を受け細胞膜、そして細胞壁へ輸送される。我々は、gpx1∆株のオレイン酸培地での生育低下には、Ccw12の量の減少だけでなく、Ccw12の輸送も関与しているのではないかと考え検討を行った。酵母細胞を可溶性画分と膜画分に分画したところ、野生株では、オレイン酸培地に移したあと、各画分のCcw12は徐々に消失していた。gpx1∆株では、野生株よりもCcw12の消失速度が遅くなっており、gpx1∆株ではCcw12の輸送が遅延していると考えられた。このことから、gpx1∆株はCcw12の量が少ないだけでなく、輸送速度が遅いことで、オレイン酸培地に移した時にかかるストレスに野生株ほど対処できなくなっており、gpx1∆株がオレイン酸培地で生育が低下したと考えられる。オレイン酸培地での生育低下は、Gpx1の機能に必要なシステイン残基の置換体では回復しないことから、Gpx1のレドックス制御がなんらかの形でCcw12の発現や輸送に影響していると推測される。
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