研究概要 |
1.Ni系触媒のCH_4熱分解反応と析出炭素の酸化的除去 種々の金属酸化物担体(CeO_2,(CeO_2)_<0.8>(SmO_<1.5>)_<0.2>(SDC),SiO_2,(ZrO_2)_<0.92>(YO_<1.5>)_<0.08>)(YSZ)に担持したNi触媒のメタン熱分解活性およびその際に析出した炭素種の酸化的除去について検討した.これら触媒のCH_4熱分解活性は,Ni/CeO_2,Ni/SDCが60min後も高いCH_4熱分解活性を示した.また,CH_4熱分解活性と炭素析出量の序列は一致し,炭素析出量はCH_4熱分解活性に依存することがわかった.析出炭素のH_2Oによる酸化(H_2O-TPO)は,いずれの触媒もCO_2生成ピークが観察されたが,Ni/CeO2,Ni/SDCは7000℃以上の高温にもCO_2生成ピークが観察され,NiCeO_2,Ni/SDCに特異的な炭素種が存在することがわかった.H_2O-TPO測定後のXRDパターンから,Ni/CeO_2,Ni/SDCは金属Ni,Ni/YSZはNiO由来の回折線が強く観察された.従って,CeO_2系担体に担持したNi触媒のNi種は,H_2Oに対して高い耐酸化性を持つことがわかった. 2.銅触媒上のCOシフト反応の活性サイトの解明 Cu-Al_2O_3,Cu-ZnO,Cu-CeO_2触媒を使って,銅触媒のCOシフト反応の活性サイトについて検討した.銅触媒上のCO吸着挙動をIRで観察したところ,Cu-CeO_2触媒では特異的に金属銅に吸着したCOのバンド強度は低下し,CeO_2上に形成したbidentate型carbonateの吸収強度が増大した.これらIRバンドの吸収強度の変化は一次の反応速度式で整理され,各々の速度定数が一致したことから,金属銅上に吸着したCOがCeO_2上でcarbonateに変化することが示唆された.この結果と昨年度に示された活性の低い触媒には強い塩基点(CO_2流通下でbidentate型carbonateを形成するサイト)が多量に存在した結果から,強い塩基点上に形成する熱安定なbidentate型carbonateは触媒毒として働くと考えられた.このことに加えて,金属銅表面積当たりの活性が弱い塩基点量に比例する結果から,本反応における銅触媒の活性サイトは金属―金属酸化物の界面であると結論した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)Ni系触媒のCH_4熱分解反応と析出炭素の酸化的除去では,触媒活性低下の原因となる析出炭素の除去について知見を得るために,種々の金属酸化物担体に担持したNi触媒のCH_4熱分解活性と析出炭素の酸化活性を調べ,還元性の金属酸化物を担体として用いたときに両反応に対して高い活性を示すことを見出した.この結果は水素製造反応を安定に操作するための基礎的な指針を提供すると考えられる.(2)銅触媒上のCOシフト反応の活性サイトの解明では,銅触媒の活性種は金属銅であると古くから考えられていたが,活性サイトは金属金属酸化物界面である可能性を見出した.また,多くの成果を公表することができた.
|