研究概要 |
本研究の目的は,マウス骨格筋間あるいは同一筋内でみられる筋衛星細胞(筋サテライト細胞)の機能的な不均一性を分子レベルで理解することであった. 1.発生起源の異なる骨格筋間におけるサテライト細胞の機能的不均一性の分子機構の理解 本研究では,非体節由来の頭部筋として咀嚼筋を,体節由来の四肢筋として腓腹筋と前脛骨筋を用いた.サテライト細胞の運命決定(増殖,分化,自己複製)について比較検討したところ,咀嚼筋由来細胞は,腓腹筋と前脛骨筋由来細胞に比べ,筋分化および自己複製しにくい反面,増殖能は著しく高いことを確認した.頭部筋と下肢筋由来サテライト細胞間の網羅的遺伝子発現比較解析を行ったところ,特にホメオボックス型転写因子の遺伝子発現パターンに顕著な違いが見られ,サテライト細胞の発生起源特異的な分子特性を明らかにすることができた. 2.同一筋内のサテライト細胞における幹細胞様細胞の同定 同一筋内のサテライト細胞の機能的不均一性を検討したところ,活性化したサテライト細胞の中には分裂頻度が著しく低い亜集団(低分裂細胞)が存在することがわかった.培養実験および細胞移植実験を行った結果,この低分裂細胞は,長期にわたって自己複製能を維持する「真の幹細胞」であり,分裂頻度の高い(高分裂細胞)集団は一過性に増幅して迅速な筋修復のために運命決定されている筋分化前駆細胞であることがわかった.さらに低分裂細胞の遺伝子発現パターンを調べたところ,Eya2, Syndecan-4, Epha2, Ephb6が高発現することがわかった.以上の結果をまとめて,論文として公表した(Ono et al., J. Cell Sci 2012).
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