研究概要 |
先行研究の成果から,基材としてTi-29Nb-13Ta-4.6Zr(TNTZ)を使用する場合,必ずしもチタニアコーティングによって骨伝導性が向上するわけではないこと,ならびに純Tiの場合と同様にTNTZ基材表面の親水性が骨伝導性に影響する可能性が示唆された.そこで,TNTZに対して,純Tiの親水化処理として極めて有効であった水熱処理を施し,その効果を検討するとともに,Nb,Ta,ZrなどのTi以外のバルブ金属に対しても水熱処理を施し,動物内埋植試験の結果と合わせることで,異なる金属材料表面における親水性と骨伝導性との関係について検討した.TNTZにおいては,陽極酸化処理の有無にかかわらず,水熱処理(453Kの蒸留水中に試料を180min.浸漬)を施すことで,大気中で1d保持した後の水滴接触角が15deg.以下まで大きく低下し,さらに試料を成膜直後にリン酸緩衝生理食塩水(PBS(-)中に保存することで,水滴接触角が5deg.以下の超親水性表面を形成することが可能であった.また,Nb,Ta,Zrの単体金属においても,同条件の水熱処理ならびにPBS(-)中保存によって,水滴接触角が5deg.以下の超親水性表面の形成が可能であり,金属種の違いによる親水性の違いは認められなかった.以上のことから,これらのバルブ金属およびその合金に対しては,水熱処理による表面親水化が可能であることが見出された.超親水化させたTNTZ,Nb,Ta,Zrを動物内埋植試験に供した場合,いずれもきわめて高い骨伝導性を示したことから,Tiだけでなく,TNTZ,Nb,Ta,Zrなどのバルブ金属で構成された材料においても,高い親水性を付与することで,骨伝導性を大きく向上させることが可能なことが示された.
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