研究概要 |
昨年度から引き続き、冥王代(40億年以前)の初期地球大陸進化を解読するため、西オーストラリア・ジャックヒルズ地域における礫岩サンプルから大量のジルコン鉱物を分離し、LA-ICP-MSによるジルコンのU-Pb年代分析、およびレーザーラマン・SEM-EDS・EPMAを用いてジルコン中に含まれる微小包有物分析を行った。1000粒を超える包有物同定をおこなっているが、未だマイクロダイヤモンドは検出されていない。ここにきて、本研究の当初の目的であったジルコン中のマイクロダイヤモンド包有物(Menneken et al., 2007)は、これらは作業中のコンタミネーションであったとする論文が2013年12月に出版され、Menneken氏提供のサンプルから確認された(Dobrzhinetskaya et al. 2014)。痛恨の極みであるが、一方で本研究の詳細な包有物同定の結果、冥王代ジルコン中にはこれまで見落とされてきた初生的なアパタイトが残存していることが判明した。アパタイトの微量元素濃度は母岩の化学組成を強く反映する為、ジルコン母岩の推定が可能である。これまでのところ、40億年以上の年代をもつ冥王代ジルコン315粒中に初生アパタイト14粒を見出し、それらのEPMA分析を行った。アパタイトのY203およびSrO濃度は負の相関を示し、それぞれ0.02-0.91wt%, 0.08から検出限界以下(0.04wt%)であった。特に、高いY203濃度(>0.4wt%)かつ低いSrO濃度(〈0,02wt%)をもつアパタイトは珪長質な岩石(sio2 >65 wt%)に限られることから、本研究の結果から、少なくとも42億年までには花崗岩が存在していたことは確実であることが判明した。さらに、ジルコン中の詳細な包有物分析の過程において、衝撃変成作用を被った特徴的な組織(granular-textureおよびplaner deformation features)を有するジルコンが、数は僅かではあるが存在することが判明した。従来、これらは隕石クレーター近傍や遠方のイジェクタ層から多数報告されているが、ジャックヒルズ堆積岩からは未だ報告されていないため、世界初の報告として日本地質学会にて発表した。上記2点の分析を進めることで、冥王代における大陸地殻の成長と破壊の具体的な描像が解読できるものと思われる。これは、当初の申請書記載の研究目的に他ならない。現在、この2点の結果について論文提出の準備を急いでいる。
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