研究課題
特別研究員奨励費
アミノ糖のモデルとして単純な環状ヘミアミナールを基質とした反応開発を行った。ピロリジン環2位でケトンα位と結合した化合物はアルカロイド合成の重要中間体として汎用性が高い。一方でその構築には、イミニウムイオンを活性中間体として経由する生合成経路を模倣した方法が数例報告されているものの、基質の適用範囲が限定的であり光学純度は中程度にとどまっていた。私はアザマイケル反応による環化を経由する新たな反応経路に立脚した汎用性の高い合成法を確立した。ハードアニオン共役ソフト金属触媒である一価銅アルコキシドを触媒として用いることで、ヘミアミナールからわずかに生じる開環体のアルデヒドと、ケトン由来の銅エノラートとの間でアルドール反応が進行する。脱水反応に続くアザマイケル反応もDTBM-SEGPHOSリガンドを用いた1価銅触媒によって制御されることで光学純度の高いピロリジン環の構築に成功した。本反応系はピロリジン環構築である5員環のみならず、6,7員環形成にも適用しうる基質一般性の高い反応系である。また、本反応で得られたキラルピペリジン化合物を2種類の反応条件に付すことで、lasubine IまたはII合成の重要キラル合成中間体へも容易に変換可能であり、アルカロイド類のキラルビルディングブロックとして有用であることを実証した。本反応では系中で生じる銅エノラートがフリーの水酸基及び水存在下においても求核剤として機能しており、ソフト金属触媒がハードな官能基存在下でも失活することなく働きうることを示しており、現在はグルコースなどの糖を基質としたC-グリコシド化反応の開発を行っている。
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Journal of American Chemical Society
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http://www.f.u-tokyo.ac.jp/~kanai/publication/index.html