研究課題
特別研究員奨励費
セラミックス粉末の合成法としては、一般的に高温・長時間の焼成を必要とする固相反応法が広く用いられ、多くは大気圧下の空気中でおこなわれている。しかしながら、反応場に水蒸気を導入することによって固相反応が促進され、目的物が低温・短時間で得られることをこれまでに明らかにしており、本研究ではその水蒸気作用の解明を目的とする。昨年度はチタン酸バリウム(BaTiO_3)の固相合成および酸化物の焼結におよぼす水蒸気作用を明らかにし、多くの複酸化物合成に水蒸気固相反応法が適用可能であることを示した。本年度はこれまでに得られた知見を活かし、水蒸気固相反応場の適用範囲を拡充させることを目指した。まず、CaCO_3と非晶質SiO_2との固相反応によるケイ酸カルシウム(CaSiO_3)の生成が、反応場に導入する水蒸気量の増加とともに促進されることを明らかにした。水蒸気中ではCaCO_3の熱分解が促進され、CaSiO_3の中間相として生成するCa_2SiO_4の生成が加速された。Ca_2SiO_4からCaSiO_3への結晶化にはSi-0-Si結合の縮合が生じるが、水蒸気はこの縮合反応に対して影響をおよぼすことが示唆された。次いで、ジルコン酸バリウム(BaZrO_3)の固相合成における水蒸気作用を検討した。原料として使用した非晶質ZrO_2の単斜晶ZrO_2への結晶化が水蒸気によって促進された。さらに、単斜晶ZrO_2ナノ粒子(約70nm)と比較的粗粒なBaCO_3(約1μm)粉末との固相反応を高温XRDおよび熱分析によって解析し、BaZrO_3が700℃と950℃の2段階(大部分が950℃)で生成することを確認した。一方、水蒸気中での焼成ではBaZrO_3の生成が大きく促進され、900℃、2時間での生成率は90%以上であった。また、得られたBaZrO_3粉末は原料ZrO_2粉末の粒子径と同程度であったことから、粗粒な炭酸塩粉末と微細な酸化物粉末との固相反応による機能性複酸化物ナノ粒子の合成が水蒸気雰囲気下では低温・短時間で達成できることが示された。
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Journal of the Ceramic Society of Japan
巻: 121 号: 1409 ページ: 103-105
10.2109/jcersj2.121.103
130004950769
巻: 121 号: 1411 ページ: 308-312
10.2109/jcersj2.121.308
130004950830