研究概要 |
本研究の目的は, ハイダイナミックレンジ(HDR)画像を人の知覚に基づいてディスプレイにリアルに表示する手法の開発である. これを以下の4つの手順で行う計画であった, 1. 人の視覚特性に関する視覚・生理学の知見を調査し工学的手法を用いた視覚特性モデルの構築 2. 視覚特性モデルを用いた, 全輝度領域に対応可能な統一的なトーンリプロダクション手法の設計と実装 3. 設計したトーンリプロダクション手法のリアルタイムアプリケーションの開発 4. 評価方法の確立と開発した手法の検証 上記の手順で, 研究を遂行することで, 多くの成果を得ることができた. まず, 1.については, 前年度纏めた, 移動光源に対処できる残像表示モデルを, 国内の論文で発表した. 2.については, 前年度設計した統一的なトーンリプロダクション手法を実装し, その成果を論文に纏めた. 論文はCG分野において, トップレベルの国際会議EUROGRAPHICS2014で発表することが決まった. 提案手法は計算負荷が小さく, 今後, 3.で計画したように, リアルタイムアプリケーションに応用可能である. さらに, 研究予定には入れていなかったが, それらと並行して, 光の分光情報を取り扱う手法を開発した. 視覚特性モデルは詳細な光の分光情報を利用する. そのため, 分光情報をコンパクトに記録し, そして, 高速な表示方法を開発が必要であった. これに対し, 既存の要素技術を組み合わせることでこの問題を解決した. この成果をまとめ, 国際会議(Computational Visual Media Conference 2013)で発表した. 4.の評価方法の確立までは行えなかったが, 開発した統一的なトーンリプロダクション手法による表示結果を既存手法と視覚的に比較・検証した結果, 目的とする全輝度領域に対応可能であること, さらに, 各視覚状態に特化した既存手法と遜色なく表示できることを確認した.
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