研究課題
特別研究員奨励費
本年度に実施した研究の成果として、脳組織の深い部位に光を照射して神経を刺激する装置の開発に大きな進展があった。具体的には0.3mmという小型の発光素子であるLight Emitting Diode (LED)のチップを金属配線をパターニングしたガラス基板上に固定した。次に断片化した光ファイバをLEDと接触させた状態で樹脂を用いて固定し、LEDからの照射光を発光面から離れた場所に集光させる事に成功した。この光デバイスは神経細胞の電気的活動を複数の電極で記録する多点電極アレイと呼ばれるデバイスと組み合わせる事を想定している。本研究で使用する多点電極アレイは15mm(およそ100分の1ミリ)という薄さのシリコンの外形をシャンク型(細長い形状)に加工し、複数の記録用電極とガラスの膜から形成された光導波路と呼ばれる構造を持つ。LEDから照射された光を多点電極アレイ上に形成した光導波路まで導く事で、活動を記録している神経細胞の近傍で光を照射する事が可能となる。実験に用いる動物の神経細胞は遺伝子改変され光に対する感受性を持っているため、光を使って神経を電気的に刺激する事が可能である。本研究の意義は、複数の神経細胞を同時に記録あるいは制御する装置を作製する事により、生物が持つ神経回路網の詳細な機能的マッピングを行い、脳の計算原理を明らかにする事にある。そのためには脳表面の神経活動だけではなく表面から1mm程度の深度を持つ皮質層の活動を記録・刺激する必要がある。本年度の研究実施計画では光導波路を有する3次元多点電極アレイを作製することによりこの目標の達成を試みた。今後、LEDから光ファイバまで集光させた光を更に多点電極アレイ上の導波路に結合させる必要がある。本研究の重要性は、LEDや近年注目されている垂直共振器面発光レーザー(VCSEL)等の非常に小さい発光デバイスを神経記録用のデバイスと統合する事により、大型で高出力のレーザー光源を必要とする従来の光刺激法と比較して、より小型で高密度な光刺激を可能とするデバイスが実現できる点にある.
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