研究概要 |
近年, においを的確に評価し得る方法の検討が重要な課題となってきている. 本研究では, 人が行ってきた官能検査を代行する人工官能検査装置を提案する. 最終年度は, ラットの神経活動から人間の嗅感覚が予測できるという仮説の根拠をより強固にするために追加実験を行い, その結果に対して検討を行った. そして, 初年度に実施したヒトに対する官能検査の結果と, 2年度目に構築したラットの神経活動とヒトの感覚の対応付けアルゴリズムをまとめ, 学術論文として発表した(Chemical Senses). また, 昨年度に引き続き, 化学受容が誘発する生物の行動メカニズムを探るために, もっとも単純な多細胞生物である線虫を模した連結型ロボットを用いて, その化学走性の実環境シミュレーションを実施した. 具体的には以1下のとおりである. 【ラットの神経活動とヒトの感覚の対応付けアルゴリズムの提案とヒトの感覚予測モデルの構築】 これまで, データベース(http://gara.bio.uci.edu/)からラット嗅球の神経活動パターンを取得し, 活動パターン間の類似度を定める指標を抽出し, ヒトが感じるニオイの類似度を比較してきた. そして, Log-linearizedGaussianMixtureNetwork (LLGMN)を用いてヒトの感覚予測を試みた。これらの結果は, ラット嗅覚系の活動パターンから人間の感覚を予測できるという可能性を示している. しかしながら, これまでに匂いの濃度依存性については検討していなかった. そこで, 濃度が異なる同一の匂いを嗅がせたときにおけるラット嗅球の神経活動パターンをデータベースより取得し, これまでと同一の手法で人間が感じる匂いの類似度を予測できるか検証した. その結果, これまでと同等の予測精度が得られることを確認した. 以上を学術論文として発表した, また, これまでに構築したラット嗅球の神経活動予測モデルを用いてガスクロマトグラフィーを用いて同定した匂い分子から神経活動パターンを予測し, 複数分子で組み合わされた匂い同士の類似度の予測を試みた.
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