研究概要 |
生活習慣病などによる慢性的な血糖値の増加は, 生体の代謝機能に影響を与え, それに伴い循環調節機能のみならず呼吸調節機能にも悪影響を与える. 本年度は, 糖尿病マウスの呼吸調節機能と, それに対する運動トレーニング効果を明らかにするために, 初めにマウスの自発運動時における呼吸機能の変化を測定することが可能かどうかを検討した. 従来, マウスにおける運動時の呼吸パターン測定は半密閉型小動物用トレッドミルを用いた測定が報告されているが, トレッドミル走による強制運動時には, ベルトの駆動や刺激装置, マウス自身の走行・停止の繰り返しなど, 不要な情報を含んでしまうことが考えられる. そこで, 我々はランニングホイールを備えた小容積プレチスモチャンバーを開発し, マウスの自発運動に伴って生じる呼吸パターンの変化を測定することに成功した. 具体的には, 呼吸シグナル・運動量・心電図・酸素・二酸化炭素濃度を同時モニタリングするシステムを構築し, 呼吸機能の評価・検討を行った, マウスのような小動物の呼吸シグナルを効率よく測定するために, チャンバー容量はホイールによる走運動が可能な範囲で小型化し, また高感度酸素・二酸化炭素測定装置を用いることで, 安静時・および自発運動時の呼吸変化と, それに伴う酸素摂取量など代謝指標の測定が可能であった. 同時に, あらかじめテレメトリー心電図送信機を腹腔内に埋め込むことで, 心拍応答との同時測定が可能であった. 本測定システムを用いることで, マウスに余計なストレスを与えない条件下での, より生理的条件に近い運動時呼吸応答が測定可能となった. しかしながら, 当初計画していた糖尿病マウスにおける運動時呼吸調節機能の変化と, それに対する運動トレーニング効果については, 十分な測定を行うまでに至らなかった.
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