研究概要 |
高い病原性と薬剤耐性を併せ持つ市中感染型薬剤耐性黄色ブドウ球菌CA-MRSA(Community acquired Methicillin resistant Staphylococcus aureus)感染症は臨床上重大な問題である。薬剤耐性獲得のため、CA-MRSA感染症は従来の抗生物質による治療では解決できない。このためCA-MRSAの高病原性発現機構の理解に基づく新規薬物開発は喫緊の課題である。 本研究の目的は、CA-MRSAの高病原性発現機構の理解、特にCA-MRSAの高病原性の原因である高毒素発現をもたらす新規機能性RNApsm-mec(Kaito C, Saito Y, Nagano G, Ikuo M et. al. 2011, PLos Pathog)が、どのようにして毒素の発現量を制御するかについて明らかにすることであった。本研究では1)網羅的解析によりpsn-mecRNAが発現を制御する因子を同定した。2)さらに毒素を含むこれら因子の発現を制御する転写因子のmRNAが、psm-mec RNAと結合して翻訳抑制を受けることを明らかにした。3)また、この標的因子mRNAおよびpsm-mec RNAの結合に必要な配列を決定できた(Kaito C, Saito Y, Ikuo M et. al. 2013, PLos Pathog)。CA-MRSAが高病原性となる原因とその機構を明らかにした。これらの結果は、cA_MRsA感染症の克服につながる重要なものである。 またアメリカテキサス大学MI)アンダーソンがんセンターに留学し、ヒト大腸がん細胞において高い発現を示す機能性RNAを同定してその仕組みを明らかにした。本結果はヒトのがんの治療およびヒトにおける機能性RNAの働きを明らかにするうえで重要である。
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