研究概要 |
本年度得られた新たな知見として、カスパーゼ非依存的なアポトーシス誘導因子であるEndoGの発現量は、12時間のMVにより有意に増加するが、複数回の熱ストレス負荷はその増加を有意に低下することを示した。一方で、AIF発現量は熱ストレス負荷によって低下する傾向が認められたものの、MVによる効果は認められなかった。加えて、MVによって増加した筋原線維分画のユビキチン化タンパク質発現量には、熱ストレス負荷による抑制効果は認められなかった。 さらに、本年度は新たに摘出筋を用いたEx vivoの実験を実施した。実験動物には14週齢のWistar系雄性ラットを用い、ペントバルビタールナトリウムを腹腔内に過剰投与することにより安楽死させた後、横隔膜を単離した。単離した横隔膜からストリップを作成し、以下の条件でインキュベートした ; 1) Krebs溶液(37℃)、2) Krebs溶液(37℃)+阻害剤(Akt, mTOR, Caspase-3, Calpain阻害剤)、3) Krebs溶液(42℃)、4) Krebs溶液(42℃)+阻害剤。インキュベーション終了後、筋ストリップの余分な水分を拭き取り液体窒素で凍結させ、その後ウェスタンブロット法による生化学的な分析を行った。その結果、オートファジー系の指標であるLC3IIタンパク質は熱ストレス負荷により53%程度低下したが、Akt阻害剤存在下では、その低下は34%程度に抑えられた(p<0.05)。また、Aktの下流のmTORの阻害剤存在下でも同様の傾向が認められた(p=0.080)。しかしながら、他の阻害剤の存在下では、熱ストレスによる細胞内シグナル伝達の変化には影響を与えなかった。これらことから、熱ストレス負荷による萎縮抑制効果にはAkt/FoxO-Autophagy系のクロストークが関与している可能性が示唆される。
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