研究概要 |
(1)漂着プラスチックごみからの有害重金属の溶出量定量 : 本研究ではすでに長崎県五島市の海岸で、ゴミ被覆面積を算出し、区間面積当たりの重量を測定し、海岸のごみ総重量を推定した(平均:716±259kg)。またハンドヘルド蛍光X線分析計を使用し、海岸全体におけるプラスチックごみ中の鉛総重量を313±247gと推定した。中でも、塩化ビニル製の漁業用フロート(以下フロート)から、鉛が高濃度で検出されたことから、平成23年度においては、海岸環境への影響を評価するため溶出試験を実施した。溶出実験から溶出拡散モデルを仮定し、海岸全体のプラスチックごみから溶出する鉛を614±577mg/年間と推定した。この成果は、国際学術誌「Environmental Science & Technology」に投稿済みである。さらに製品フロートでも溶出試験を実施した結果、フロート1個あたりの鉛溶出量は、漂着物の2.8倍、傷をつけたフロートでは製品の2.3倍であった。これは、新しい製品が海岸に漂着すると溶出量が増えること、また物理的外傷を受けると、さらに溶出量が増大することを示唆している。 (2)漂着ごみ起源国の推定:漂着ごみの大部分は文字情報が欠落し、投棄量削減のための協議にあたって相手国を決めることが難しい。そこで、漂着プラスチックごみに含有する元素組成が起源国毎に異なる点を利用し、起源国推定の手法確立を試みた。完全では無いが、Al, Cr, Sr, Ba, Pbの濃度情報を元とした場合に、起源国推定ができる可能性が示唆された。 (3)漂着ごみ中の残留性有機汚染物質(POPs)の定量化 : 本年度は分析方法確立のため、米国・サンディエゴ州立大学に1ヶ月間滞在し、同大学Chelsea Rockman氏のご協力の下、海洋プラスチックに関するPOPs分析方法の習得に努めた。
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