研究課題/領域番号 |
11J55553
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
物性Ⅰ(光物性・半導体・誘電体)(理論)
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
石川 豊史 慶應義塾大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2011
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研究課題ステータス |
完了 (2011年度)
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配分額 *注記 |
400千円 (直接経費: 400千円)
2011年度: 400千円 (直接経費: 400千円)
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キーワード | シリコン / フォトルミネッセンス / C-line / スピン三重項 / 等電子発光中心 |
研究概要 |
半導体中の不純物が持つ電子、核スピンは量子情報の保持時間(コヒーレンス時間)が長いことから、量子ビットの候補として研究が盛んに行われている。特に、シリコン(Si)をベースとした量子コンピュータは、Si同位体制御によって、デコヒーレンス源である^<29>Si核スピン(I=1/2)の抑制が可能である上に、既存の半導体微細加工技術との接合性が非常に良いため、注目を集めている。また、大規模量子情報処理おいて、遠く離れた2つの量子ビットを、フォトンを介してアクセスできる量子プロセッサが必要とされており、Si中のスピン量子ビットを光学的に読み出す技術の確立は非常に重要な課題とされている。そこで、我々は、従来のドナーやアクセプターより発光効率の良い、Si中の等電子発光中心に着目し研究を進めている。本研究では、Si中の等電子発光中心の1つである炭素-酸素(C-O)発光中心を用いて研究を行った。このC-O発光中心は、束縛励起子を構成する片方のキャリアが炭素近傍に束縛されるため、^<13>C炭素の核スピン(I=1/2)の状態を光学的に検出できるものと期待される。 本研究では、フォトルミネセンス測定を用いて、C-O発光中心に束縛された励起子の発光スペクトルを調べた。その結果、我々は、790meVに位置するゼロフォノン発光ピーク(C_T-line)より2.64meV低いエネルギーに新しい発光(C_T-line)を観測することに成功した。さらにC_T-lineに関する局在振動モード、C_T-lineとC-lineとの発光強度比に関する温度依存性、母体シリコン結晶同位体組成比に起因する発光ピーク位置の変化、外部磁場印加中でのゼーマン分裂などの観測と解析を統括することから、C_T-lineが炭素-酸素欠陥に束縛された励起子のスピン三重項状態に基づく発光ピークであることを明らかにした。 半導体中の不純物欠陥を量子情報処理に利用する場合には、その不純物欠陥のエネルギー準位・磁気特性・発光特性を正確に把握し、そのうえで不純物欠陥の量子状態の操作と放出される光子状態の活用方法を見出す必要がある。本研究で得られた知見は、Si中の等電子発光中心を量子情報処理に応用するという新しい方向性に重要な指針を与えるものと期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
量子情報処理においてシリコン中の等電子発光中心に着目した先行研究は数少なく、発光特性や発光中心の構造に関して明らかになっていない部分がある。本研究で得られた結果は、炭素-酸素等電子発光中心の発光特性に関してより詳細な理解を与えるものであり、シリコン中の等電子発光中心を量子情報へ応用させるという試みの指針を与えるものと期待される。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、シリコン中の等電子発光中心として炭素-酸素(C-O)発光中心に着目した。C-O発光中心に束縛された励起子の内、片方のキャリアは炭素近傍に束縛されていることが過去の報告から明らかにされており、スピン三重項状態からの発光(C_T-line)を介した^<13>C核スピンの光学検出が期待される。しかし、^<13>C炭素の同位体濃度は1.1%と少ないため、^<13>C-O発光中心の濃度を^<12>C-O発光中心の濃度に比べて、いかに多くシリコン中にドープすることが次の課題である。
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