医療用ネットワークとして、干渉を抑えながら適切に通信を行い、さらに位置情報までも推定しその情報も使った通信の効率化を考えた。そのためには、各端末やデバイスの位置情報を知ることが重要であり、医療用デバイスとしては、薬剤などの管理を行い、患者の行動推定および管理、トラッキングなどを行うことが想定される。これを実現する際に、送信点と受信点の間に障害物が存在することによって、直接波が届かず、反射波や回折波のみしか到来しないことにより、電波到来時間に遅延が生じてしまうという見通し外通信(Non line of sight : NLOS)問題があった。これにより、時間情報を利用した位置推定方式は影響を受け、推定精度が劣化してしまう。これを改善するための検討を行った。 まず位置推定方式として、到来時間(Time of Arrival : TOA)を用いるものの検討を行い、従来の、最初に推定された座標情報を用いて、NLOS遅延量のみを抽出し、それを大きな遅延から段階的に補正していくことによってNLOS環境下においても、位置推定精度を向上できるアルゴリズムの更なる改善を考えた。送信タグと受信ノードの幾何学的な位置関係より、NLOSノードに影響され、より精度が劣化してしまう問題があった。これは、タグの真の位置からNLOS遅延によってシフトしてしまうものであり、NLOSノードから見てタグに向かう方向にシフトするベクトルとして表現される。中央付近に存在するタグは、これらのベクトルの和が相殺されることにより、誤差量は大きくないが、外側に存在するタグは、ベクトルの和が大きく外側を向き、外側での位置推定精度劣化が顕著になる。よって、このようなシフトベクトルを適切に補正することによって位置推定精度を向上することが可能となった。
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