プリオン病は異常型プリオンタンパクの蓄積、ミクログリア、アストロサイトの活性化(グリオーシス)、空胞変性を特徴とする疾患である。我々は免疫抑制剤FK506がプリオン感染マウスの生存期間を延長させることを見出した。さらにその作用はミクログリアの抑制とタンパク分解経路(オートファジー)の活性化の2つに分けられると考えられた。今回我々はFK506のグリオーシス、空胞変性への影響とオートファジー活性化のメカニズムの検討を行った。 FK506は部分的にグリオーシス、空胞変性を抑制する プリオン感染マウスを発症後(感染110日後)に解剖し、免疫染色法及びヘマトキシリン・エオジン染色グリオーシスと空胞変性の程度を解析した。グリオーシスは有意な差ではないものの、FK506投与群の脳の各部位で抑制されている傾向が認められた。また、空胞変性は海馬と視床において有意に抑制されていた。これまでの報告でFK506はアストロサイト、ミクログリアのそれぞれの活性を抑制すると報告されてきたが、その効果はプリオン病においてはミクログリアの方が強いことが分かった。ミクログリアやアストロサイトの活性がが空胞変性を引き起こすと考えられており、これらの抑制が空胞変性の抑制につながっていると考えられる。 FK506はFOXO3を活性化させることでオートファジーを促進する FK506はFKBPと呼ばれるタンパクと結合することが知られているが、このうちFKBP52はオートファジー活性を司るFOXO3を抑制すると報告されている。そこで培養細胞をFK506で処理すると、濃度依存的に活性型のFOXO3が増加し、オートファジーも活性化していることが分かった。この結果からFK506がFOXO3を介してオートファジーを活性化することが示唆された。
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