研究概要 |
私どもは、健常児でvisually guided saccade task,antisaccade taskを4-1.3歳の各年齢群の小児計99名について調べたところ、単純なvisually guided saccadeに比べてantisaccadeのような複雑なサッカードの成熟が遅れることがわかった。また、学習障害児(以下LD群)を健常群と比較したところ、LD群ではvisually guided saccade taskに異常がないにもかかわらず,memory guided saccade taskでは視標を見てしまう反射性サッカードの抑制困難と正しくできたときにも潜時が延長することを見いだした。このようにLD児での"異常"は、より低年齢の健常児においても認められるものであった。そこで問題は、LD児の眼球運動の"異常"は将来変化するのか同じ状態に留まるのかということである。そのために、本年度はこの縦断的検討を健常児5名で行った。課題はgap saccade,overlap saccade,memory guided saccade,antisaccade taskで、平均潜時、express saccadeの割合、反射性saccadeの割合等を同一被験者で3年前と比較した。その結果今回対象となった被験者では成熟とともにexpress saccadeの割合の低下を示し,memory guided saccade taskにおいて潜時が短縮した。Antisaccade taskでは、反射的に視標を見てしまうエラーが10歳と13歳の3例では減少したが、16歳の2例で変化がなかった。この理由は、彼等は第1回目からエラー率は成人の正常範囲の低い値にあったためと考えられる。Saccadeの随意性制御には、前頭葉眼球運動関連領域が関与し、これらの結果はその成熟を示唆していると思われる。今後LD児について縦断的に検討する予定である。
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