研究課題/領域番号 |
12011209
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研究種目 |
特定領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤田 和生 京都大学, 大学院・文学研究科, 教授 (80183101)
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研究期間 (年度) |
2000
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研究課題ステータス |
完了 (2000年度)
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配分額 *注記 |
1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
2000年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
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キーワード | 生物的運動 / 因果認識 / 顔図形認識 / マカクザル / チンパンジー / 乳児 / 偏好注視法 / 比較認知発達 |
研究概要 |
ヒト乳児は外界に関する種々の複雑な知識を数ヶ月齢から示す。例えばヒトの頭部や関節に光点をつけて闇の中を歩かせると、我々はその光点の動きが即座にヒトであると認識するが(生物的運勧:BM)、同様の認識が乳児にもある。単純な図形が顔のように配置されていると、ヒト乳児はそれをよく凝視する。ヒト乳児は特定の事象の認識を容易にするための種々の枠組みを持って生まれてくるようである。本研究の目的は、これらの枠組みの系統発生を調べることであった。(1)マカクザルおよびチンパンジー乳児に、ヒトおよびマカクザルまたはチンパンジーの正立・倒立BMを提示し、偏好注視法により凝視時間を測定した。飼育室で母子あるいは人工保育されているサルでは、8-15週齢の時期にヒトの正立BMを倒立より長く注視した。サルのBMでは明瞭な傾向は見られなかった。逆に放飼場で群れ飼育されているサル乳児では、4-11週齢の時期にサルの正立BMを倒立より長く注視した。ヒトのBMではそのような傾向は見られなかった。また集団飼育されているチンパンジー乳児では、4-6ヶ月時にチンパンジーの正立BMを倒立よりも長く見た。これらから、BMの認識の発達には、豊富な実運動の観察経験が重要な役割を果たしているものと思われる。(2)馴化法を用いた実験から、10ヶ月齢のヒト乳児は、ヒトが外的な力を受けずに突然倒れた場合には、それを不自然なものと認識することがわかった。乳児はヒトの動作すべてが自発的でモノとは異なる因果関係を持つ、と認識するのではないことがわかった。(3)マカクザル乳児に顔図形と部品をでたらめに配置した図形を対にして見せると、8週齢以上で顔図形をよく追視する傾向が見られた。チンパンジーでも、やや不明瞭ながら3ヶ月齢程度から同様の傾向が見られ、霊長類乳児は顔図形の認識ではヒト乳児とほぼ同様の発達を遂げることがわかった。
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