前頭連合野による行動抑制における抑制ニューロンの役割を明らかにする目的で、対称性および非対称性強化の視覚性ゴーノーゴー課題を行っているアカゲザルのコザルの弓状領域(主として、ブロートマンの8野である)に、ヨヒンビン(アルファ-2アドレノセプターアンタゴニスト)またはビククリン(GABAaアンタゴニスト)の微量を、直接注入すると、対称性強化でも非対称性強化でもゴー・ノーゴー課題の遂行成績が悪くなると同時に多動が誘発された。1998年生まれのリコとモエの左右前頭葉の8野にヨヒンビン20箇所、ビククリン20箇所注入した。どちらの薬物の場合でも、称性および非対称性強化の課題の成績が、注入数分で低下を始め、20-30分で60-70%で最大低下となった。これに比例して、試行に要する時間が延長した。この延長は目的のはっきりしない運動(前後左右上下への移動、回遊歩行、ジャンプなど)や行動(周囲にある何かを探すような行動、実験者の手指、白衣に触れ、引っ張る行動をするようになるためであった。このような運動や行動は、多動と呼ばれているもので、前頭連合野の破壊でみられるものと極めて似ている。ヨヒンビンとビククリンで効果の違いは、定性的なもので、違いを明確にすることは出来なかった。前頭葉でアドレナリン神経終末はGABAニューロンにも結合するので、どちらの薬物の効果も、8野のGABAニューロンの脱抑制によると考えられた。
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