研究概要 |
法医学の分野では、DNAによる個人識別や親子鑑定などのため、STR(Short Tandem Repeat)領域が最も汎用されている。これらを分析するために、多色蛍光標識プライマーを用いたMultiplex-PCR法を利用して開発されたキット(AmpFlSTR Profiler plus kitとCofiler kit)を用いて、13のローカス(D3S1358,vWA,FGA,TH01,TPOX,CSF1PO,D18S51,D21S11,D8S1179,D16S539,D5S818,D13S317,D7S820)が簡便に増幅・タイピングできる。この2つのキットを利用して計13STRローカスのアレル頻度を中国人5集団(陜西省108名、江蘇省119名、福建省116名、湖南省105名、広東省111名)及びタイ人(バンコク市183名)で算出した。昨年度までに各ローカスのアレル頻度を算出した日本人2集団(本土及び琉球)、韓国人(ソウル市)、中国人(北京市近郊)、ミャンマー人(ヤンゴン市)を含めた計11集団で、アレル頻度が比較的安定するといわれている100以上のサンプル数を用いて、計1493サンプルをタイピングした。この13ローカスのSTRのアレル頻度分布から遺伝距離DAを算出し、近隣結合法により系統樹を作成した。本土日本人と沖縄日本人で1つ、中国の北中部である北京市近郊、陜西省と江蘇省の集団で1つ、中国の南部である福建省、湖南省と広東省の集団で1つ、ビルマ人とタイ人で1つの同じクラスターを形成し、そのtopologyは現在の地理的分布をよく反映していた。
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