研究概要 |
mtDNAとY染色体マーカーについて調べた.すべての都道府県および5ヵ所の離島集団から計約7,000人におけるmtDNAの5ヶ所の塩基置換部位多型(16SrRNAの3010番の塩基置換,tRNAの4386番の同義置換,百寿者に有意に多く認められるND2の5178番の塩基置換,ND3の10398番の塩基置換,ATP6の8794番の塩基置換,Region Vの9bp欠損)を調査した.日本人は20種類程度のハプロタイプに分類された.各集団間における頻度には大きな差異が認められなかったことから,これらの塩基置換から見た場合,日本人はかなり均質な集団と推定された.しかし,例えばB2ハプロタイプは南西諸島では高頻度で,北に向かうに従って頻度の低下する地理的勾配を示し,韓国人で3%,中国人では観察されなかった.ハプロタイプ頻度を用いてCavalli-Sforzaのchord distnce(Dc)を求め,NJ法で系統樹を描くと,各日本人集団は一つのまとまりのあるクラスターを形成し,ついで韓国人-北中国人-南中国人のそれぞれのクラスターが連続して分布した.東アジア集団間では沖縄と南中国がもっとも遠い距離にあり,いくつかのハプロタイプで沖縄,日本,韓国,北中国南中国に頻度の勾配が見られた.DYS19、DYS389II、DYS390,DYS393の4座のSTR多型のハプロタイプ頻度に基づいてCavalli-Sforzaのchord distnce(Dc)を求め,NJ法で系統樹を描くと,mtDNAと同様に,各日本人集団は一つのクラスターを形成し,ついで韓国人-北中国人-南中国人のそれぞれのクラスターが連続して分布し,沖縄と南中国人との近縁性は他の集団に比べ低かった.
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