研究概要 |
未利用廃棄物にはカキ殻、水産加工工程発生資源としてと水産加工廃水処理場発生の乾燥汚泥を対象として、これらの資源を組み合わせ農耕地へ散布することでより高い「生産」へ結びつかくを検討した。ここでの対象空間は農耕地生産と、沿岸域の魚介類生産である。 近年沿岸域の生態系異変が頻発しており、これには農地から河川を経て海に至る栄養塩溶脱をどのように防いでいくかを考えることも大切になる。そこで、カキ殻によってどの程度施肥や土壌微量成分の溶脱を防ぐことができるかを検討し、併せて土壌からの重金属溶出抑制効果に付いてもその効果を検討した。 カキ殻による窒素、リンおよび微量成分の間隙水中への移動抑制効果の実験は、水田のように常に水で飽和している実験系(1)と、畑、牧草地のように基本的に土中空隙が空いている実験系(2)の二つで評価を行った。 水田を想定し土中間隙が水で飽和した(1)系、畑、牧草地を想定して行った(2)系は、共にカキ殻混入による浸透水中リン濃度の減少効果を明確に示した。窒素の減少効果は、畑を想定した(2)系で浸透水中濃度減少が見られた。土壌間隙が水で満たされた水田のケース実験系(1)ではカキ殻投入による削減効果を見出せなかった。このように農地へカキ殻を散布することによるリン、窒素の土中溶出抑制効果は、リンには共通して見出せた。一方窒素では実験系によってそれぞれ異なった結果を示した。重金属溶出抑制へのカキ殻混入効果は、実験範囲から浸透水中濃度としてはCd,Pbで10-1,Crで10-2程度を削減できる可能性が示された。また、鉄、銅など必須元素の浸透水中への溶出抑制効果も見ることが出来た。カキ殻のような水産系廃棄物の畑や河川下流部への散布といった単純な利用法によって、土壌浸透水への必須元素の溶脱防止、水中の重金属トラップといった働きも期待することができる可能性が示された。
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