研究概要 |
本研究では,各種産業から排出される有機性副産物のフロー解析の結果に基づき,有機性副産物を炭化し,得られた炭素の高度資源化を図り,炭素循環を基本とする持続可能なリサイクル技術を構築することを目的とし,従来の炭素材料にはない特徴を有する炭素材料の製造を行い,高付加価値を有する炭素材料として再利用するための技術を開発した。 アセテート,ビニロン,ナイロンの炭化による炭素収率は麻,レーヨン,綿,ポリエステル,ウール,アクリルの炭素収率に比べ低値を示し,通常の炭化方法では不適であることが判った。製造した繊維由来炭素材料による4-ノニルフェノールの吸着等温線より吸着特性を求めた結果,環境ホルモン除去用炭素材料として用いることができた。 下水処理場からの放流水1Lを採取し,0.5mgの繊維由来炭素材料を添加した結果,含有されている全有機物濃度は,7.2mg/Lが7.1mg/Lまで減少した(除去率1.4%)。一方,17β-エストラジオール濃度は,0.0105μg/Lから0.0040μg/Lまで減少した(除去率62%)。繊維由来炭素材料による17β-エストラジオールの除去率は,全有機物への除去率に比べ44倍となり,環境ホルモンを選択的に吸着除去できることが明らかになった。 本研究の結果,各種繊維および混紡繊維由来炭素材料の収率は,繊維の種類により大きく差が認められた。さらに混紡繊維や混合繊維由来炭素材料の炭化による炭素収率,比表面積,細孔容積は,単一繊維由来炭素材料に比べ高値を示したことより,単一繊維では利用できなくても,混合繊維として利用することにより炭素材料として使用できるケースのあることが判った。
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