研究概要 |
【研究目的】 めっきプロセスの中でもっともエミッションの大きな無電解めっきプロセスを主眼におき,これまでにめっきプロセスの物質およびエネルギーバランスの解析(平成9年度),めっき工場内で行われている種々のめっきプロセスを複合化させることによるゼロエミッション化の提案(平成10〜11年度)を行ってきた。本年度はこれまでの研究を発展させ,めっき老化液中に含まれる未利用物質を他産業の資源として転換する要素技術の開発を試みた。 【研究成果の概要】 1)無電解めっきプロセスにおける未利用資源:1987年の統計では,我が国で無電解めっき法で生産されるニッケルめっき被膜の生産量は300トンである。しかしながら,それに伴い年間125千トンもの老化めっき液が廃棄される。これはめっき浴が不安定でその寿命が極めて短いことによる。この老化めっき液にはニッケルなどの金属と亜りん酸に含まれるりんが未利用資源として大量に含まれており,この未利用資源を資源化して循環利用できればめっきプロセスのゼロエミッション化が計れるものと結論づけた。 2)老化めっき浴中のりんの変換:老化めっき浴中のりんは亜りん酸の形態で存在している。資源化のためには亜りん酸をりん酸に酸化する操作が必要であるが,アルカリ性溶液中の溶存酸素による酸化反応により,亜りん酸をりん酸に変換できることを見いだした。 3)水産業廃棄物によるりんの資源化:りんをアパタイトとして資源化するためには,りんの他にカルシウム源が必要である。本研究ではカルシウム源に貝殻などの水産業廃棄物を用いることとした。水産業において,貝殻は大量に発生する未利用資源であり,かきに関する一昨年の統計によると,全生産量20万トンのうち,食用のむき身として出荷されるのはわずかに3万トンであり,残りの17万トンはかき殻として廃棄されている。このかき殻の主成分は炭酸カルシウムであり,これを原料に,りんの資源化に用いる材料の合成を試みた。かき殻に豚骨を加えて加熱処理を施して合成したセラミックスをりん酸塩溶液中に添加して25℃で72時間反応させた結果,液中のりんをほぼ100%除去できることが明らかとなった。このセラミックスの主成分のリン酸四カルシウム(TTCP,Ca_4(PO_4)_2O)が溶液中のリン酸イオンと反応して,水酸アパタイト(Ca_<10>(PO_4)_6(OH)_2)を形成したことによりリンを固定できたものと考えられる(Fig.1(4))。水酸アパタイトはリン鉱石の主成分であるフッ素アパタイトと組成,構造とも類似しており,リン生産に転用できることから,この方法によりリンを資源化できると考えられる。
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