研究概要 |
酵母細胞表層への標的分子を提示するための基礎研究とし以下の研究を行った。 1)Shizosaccharomyces pombe細胞からα-1,3-グルカンおよび高分岐β-1,6-グルカンの抗体を得ることに成功した。 2)平成11年度に開発した加圧凍結法で固定したS.pombe細胞において、免疫電子顕微鏡法により上記の抗体の反応性を検討した結果、α-1,3-グルカンは細胞壁の最外層と細胞膜に沿った部位に、高分岐β-1,6-グルカンは細胞壁を貫通して局在することが判明した。 3)S.pombeのα-1,3-グルカン合成酵素Mok1pに対する抗体を用いた免疫電子顕微鏡法およびフリーズフラクチャーレプリカラベリング法により、Mok1pは細胞膜に存在し、さらに細胞周期に伴って細胞壁の新生部位である細胞端や隔壁形成部位にその局在を変化させることが判明した。 4)mok1変異株の細胞形態と細胞壁形成過程の透過電顕および走査電顕観察から、α-1,3-グルカンは正常な強度を持つ細胞壁の構築に必須であり、特にグルカンネットワーク形成に重要な役割を果たすことが示唆できた。 5)S.cerevisiae細胞における生細胞観察および共焦点レーザー走査顕微鏡観察の結果、EGFPとα-agglutininのC末端部との融合タンパクが細胞周期にともなって出芽予定域から娘細胞、その後母細胞へと、細胞壁新生部位に移行する過程が可視化できた。また、同細胞において確立したプロトプラストの細胞壁再生系を用い、融合タンパクがグルカン形成と関連して輸送・分泌されることを見い出した。これらの結果は、外来の細胞表層提示タンパクが、酵母本来の細胞壁タンパクと同様に挙動していることを示した。 以上の結果から酵母細胞壁を構成するグルカンやマンナンなどの構成成分がそれぞれ複雑な制御系により合成、輸送されることが明らかとなり、酵母表層デザインのために有用な知見が得られた。
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