研究概要 |
本研究は,生物工学的手法と薬剤学的概念を併用して,特定の遺伝子の転写阻害剤を,特定の細胞の核に特異的に移行させる系を構築することを目的とする.具体的な戦略としては, 1)がん細胞に特徴的に発現しており,その増殖に必須の遺伝子の転写阻害剤をデザインし, 2)pH-sensitive mechanismを用いて,細胞内での分解過程を回避してサイトソルに放出させ, 3)細胞内での動態を制御して,これを核に選択的に濃縮する. という複数のターゲッティング方法を併用して,がん細胞の特異的増殖抑制系を構築することを目標とする.本年度は,トランスフェリンレセプターを標的とし,細胞内へ選択的に導入させることに成功した.最適な表面密度に関しても検討を行い,5〜10%が最適であることが明らかとなった.エンドソーム脱出過程の促進に関しては,pH-依存性に膜融合能を持つペプチドGALAを用いて,エンドソームから細胞質中への放出過程を促進することを検討した.共焦点レーザー顕微鏡による解析の結果,GALAをリポソームの水相に封入しても促進効果は見られなかったが,GALA-脂質誘導体をリポソーム膜に封入したところ,エンドソームから細胞質中への放出過程を促進させることに成功した.
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