研究概要 |
中鎖型プレニルトランスフェラーゼはE型プレニルトランスフェラーゼの中で唯一ヘテロダイマー構造を有する酵素群であるが,他のホモダイマー型酵素の研究から得られた生成物の炭素鎖長制御に関する知見が,これらの酵素群に関しても適用可能であるのかは興味が持たれるところであった.我々はこれまでに,プレニルトランスフェラーゼの基質結合サイトであるDDXX(XX)D配列周辺に存在するいくつかの特徴的な構造が生成物であるポリプレニル二リン酸の鎖長を決定する要因であることを推測している.縮合反応が進むにしたがって酵素に結合したポリプレニル二リン酸の炭素鎖は上記のDDXX(XX)D配列が存在するαヘリックスに沿って伸長し,最終的にこのαヘリックス上の嵩高いアミノ酸側鎖にブロックされて酵素から解離すると考えられている.中等度好熱菌Bacillus stearothermophilus由来のヘプタプレニル二リン酸合成酵素は中鎖プレニルトランスフェラーゼに分類されるが,同酵素を対象とし,他のプレニルトランスフェラーゼに相同な側のサブユニットにおいて鎖長制御に影響すると考えられる位置に変異を導入した.その結果野生型酵素よりも長鎖,および短鎖の生成物を合成する複数の変異型酵素の作成に成功した。この結果は,中鎖型プレニルトランスフェラーゼにおいても同様な生成物鎖長決定機構が存在していることを強く示唆するものであり,プレニルトランスフェラーゼにおける分子デザインの可能性をさらに広げるものである。
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