研究概要 |
本研究ではクロラムフェニコール・リン酸エステル誘導体を抗原として得られたエステル加水分解を触媒する数種類の抗体(生物分子工研・藤井博士により供与された)を解析の対象とした.その中で触媒抗体6D9および7C8を研究対象として取り上げ、その触媒活性発現機構を構造生物学的見地より明らかにする目的で以下の研究を進めた. 1)TRNOE法により,触媒抗体に結合した基質,および遷移状態アナログの構造決定を行う. 2)安定同位体利用NMR法により,遷移状態アナログおよび基質結合状態における,触媒抗体反応部位のアミノ酸残基の存在様式を解明する. TRNOE解析の結果から,触媒抗体6D9のエステル結合は不安定なシス型に偏ったコンフォメーションをとり、基底状態の基質を不安定化させている可能性が示唆された.7C8の触媒部位にはHis残基が存在し、その化学状態(プロトネーション状態)が活性発現に重要であることが明らかになった。
|