研究概要 |
細菌Sphingomonas sp.Alは、細胞表層に巨大な孔(体腔)を形成し、そこから高分子物質(多糖アルギン酸)を取り込む。この高分子物質取り込み機構を明らかにするため、取り込みに関わる全タンパク質とその遺伝子の構造と機能を解析した。その結果、細胞外に存在する高分子物質は、細胞表層の孔(体腔)に濃縮された後、ペリプラスム局在性の高分子物質結合タンパク質(Q1,Q2)に補足され、膜に配位された巨大な高分子透過装置[透過酵素(M1/M2)とABCタンパク質(S/S)]に渡される。高分子のまま細胞質内に取り込まれたアルギン酸は、細胞質に存在する3種類の高分子特異的リアーゼ(A1-I,-II,-III)と1種類の低分子糖特異的リアーゼ(OAL)で単糖にまで分解、資化される。この一連の高分子取り込み反応に関わるタンパク質と遺伝子の全てを分離し、その個々の機能を明らかにし、全体的な平面構造を解明した。次に、この取り込み装置の全体を立体的に把握するため、本研究ではQ1,Q2,及びSのX線結晶構造解析を行い、これらの3次元構造を決定した。Q2結晶は、斜方晶型で、空間群P2_12_12_1に属し、a=41.8Å,b=95.5Å,c=140.3Åであった。Q2と75%の相同性を持つQ1についても、ほぼ同様な結晶定数を決定した。Sは斜方晶型で、空間群P2_1に属し、a=57.4Å,b=92.7Å,c=65.8Åであった。6回膜貫通タンパク質であるM1,M2の構造決定は現在進行中である。Q1,Q2の性質を明らかにするため、その高分子結合実験を行い、これらが高分子アルギン酸と極めて強く結合(結合定数約10^<-7>M)することを明らかにした。これらの結果から、細菌には高分子物質を丸飲みする極めて巧妙な分子器官が発達していること、及び高分子物質を取り込む体腔依存の新規なABCトランスポーターの存在を確実にした。
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