研究概要 |
カルボキシル基をエチレンジアミン(ED)でアミド化したウシのRNaseAはキャリアードメインなしでも,SV40で悪性化したSwissマウス3T3細胞株(3T3/SV40)に対して強い細胞毒性(GI_<50>=0.17μM)を示すことを昨年報告した。これはEDによるカルボキシル基の修飾でRNaseAがカチオン化され,アニオン性のガン細胞表面に効率よく濃縮されるために細胞に進入しやすくなること,及び導入したEDの立体障害で細胞内のRNaseインヒビターによる酵素活性の阻害を受けなくなることが原因と考えられた。この修飾では,RNase活性も大きく低下するため,今年度はEDによる修飾率を様々に変えたRNaseA誘導体を調製し,修飾率と細胞毒性及びRNase活性の関係を調べた。その結果,修飾率を上昇(カチオン性の増大)させるとRNase活性は単調に低下する(最大で0.2%まで低下)のに対し,細胞増殖阻害活性には最適の修飾率(最適のものはRNase活性が8.8%でGI_<50>が0.06μM)が存在することがわかった。さらに少ないカルボキシル基の修飾でRNase活性の低下を抑えつつかつ効率よく正電荷を導入することが可能かどうかを調べるために,種々の平均分子量を持つポリエチレンイミン1分子をカルボキシル基に導入したRNaseA誘導体を調製したところ,RNase活性は使用したポリエチレンイミンの平均分子量によらずほぼ一定(約25%)だが,細胞毒性は正電荷の増加(∝ポリエチレンイミンの平均分子量)とともに強まることが明らかになった(GI_<50>=3.3〜0.33μM)。以上の結果より,RNase活性の低下を抑えつつ,大きな正電荷を導入したRNaseは,成長因子とハイブリッド化して成長因子受容体を標的とするガン細胞を標的とする細胞増殖阻害剤を構築するための毒素ドメインとしてきわめて有用であると結論した。
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