研究概要 |
本研究は、免疫細胞への標的素子と抗原蛋白をナノスフェアに結合させたバイオコンジュゲートを用い,抗原提示細胞への抗原の標的化によって,免疫細胞間のシグナル遮断ならびに抗原の免疫細胞内への取り込み効率化を行うことで,効果的な抗原特異的免疫応答の誘導制御を達成し,これを応用したワクチン開発を行うことを目的としている。昨年度,免疫細胞への標的素子として、T細胞上のレセプター分子であるCTLA4の細胞外ドメインの組換え分子を,さらに,我々が単離したCTLA4ミミックモチーフF2と抗原分子との融合蛋白質を調製し,その抗原提示細胞の表面レセプターCD80,86に対する標的能,並びに、一部,その免疫増強能について検討した。本年度は,これらの組換え分子あるいは抗原とナノスフェアとのコンジュゲートを作製し,その免疫誘導能について検討した。CTLA4,並びにF2モチーフを抗原(リゾチーム)と供にコンジュゲートしたナノスフェアをマウスに腹腔内投与し,3週間後,並びに10週目に抗原で再刺激した後,血清中の抗原特異的な抗体産生をELISAで評価した。その結果,CTLA4,並びにF2モチーフと抗原とのコンジュゲートでは,低い抗原投与でも効果的な抗体産生が見られた。3週後の血清では,CTLA4コンジュゲートは,F2コンジュゲートの約5倍の抗体産生が見られ,再刺激後では,同等の抗体産生が見られた。また,これらの抗体のアイソタイプ解析から,これらのコンジュゲートによって引き起こされるT細胞リスポンスは,Th2タイプであることがわかった。以上のように,免疫細胞を標的化することで,アジュバントを用いずに,また単回投与のみでも,効果的に免疫応答を誘導するコンジュゲートの作製した。本研究は,アナフィラキシーショックなどの副作用の少ない効果的なワクチンを創製するための有用な手法を提案した。
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