研究概要 |
リポソーム及びタンパク分子から形成される3次元アッセンブリはリポソームの表面電荷密度とタンパク分子中の荷電密度のバランスにより直径1〜10μmの安定な3次元構造を形成する点に特徴があるが、環境ホルモンのような脂溶性の物質はこの3次元コンプレックスの疎水性領域に容易に浸透し、その構造に変化をもたらす。本研究では、この3次元アッセンブリを細胞膜のモデルとし、内分泌かく乱物質(環境ホルモン)を評価する方法と、その効率化について検討した。 環境ホルモンとしては、ノニルフェノール、ベンゾフェノン,ビスフェノールA,フタル酸エステルをとり挙げた。あらかじめ調製された3次元アッセンブリに、それぞれの物質を室温、または37℃で作用させて、経時的に吸収スペクトル変化を計測した。3次元アッセンブリの構造が変化することにより、この粒子による光散乱に変化が生じた。この変化は37℃、300nmで最も顕著であったため、300nmにおけるみかけの吸収変化を指標とした。また、ノニルフェノールについては、測定後のスペクトルを平滑化処理することにより、10ppb〜100ppbの範囲での計測が可能であった。ベンゾフェノン、ビスフェノールA,フタル酸エステルであるbutylbenzyl-phthalateについては、いずれも0.1〜1ppmの範囲で計測が可能であったが、時間変化は物質毎に異なり、ビスフェノールAやベンゾフェノンでは10時間後、butylbenzyl-phthalateは12時間後、ノニルフェノールは24時間後が最適であった。環境ホルモン作用のないラウリル酸では変化が見られず、わずかな作用がある、dimethylphthalateでは変化はほとんどなかった。
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