研究課題/領域番号 |
12020203
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研究種目 |
特定領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
小川 智 岩手大学, 工学部, 助教授 (70224102)
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研究期間 (年度) |
2000
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研究課題ステータス |
完了 (2000年度)
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配分額 *注記 |
1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
2000年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
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キーワード | 複素環 / 酸化還元 / 7π電子系 / フェロセン / 電子移動 / テトラチオシン / ジチイン / ペンタチエピン |
研究概要 |
16族典型元素から構成される複素5員環骨格内に形成可能な新規7π電子系分子群の合成と可逆酸化還元特性の発現を目的とし、研究を行った。スズおよびチタン原子を有する5員環メタラサイクルを有用な合成前駆体として、硫黄、セレン、およびテルル原子を含むベンゼン縮環系複素5員環分子群の構築を確立した。さらに単電子酸化反応により相当するラジカルカチオン塩類を安定に単離し、単電子還元反応により再び中性分子へと再変換できることを明らかにした。 さらに基本骨格として、それ自身酸化還元活性なフェロセンに、これまでの複素環系を組み込んだ分子群を選定した。このように有機部位と遷移金属錯体を縮合させ、機能化を図る研究はこれまでに例はなかった。出発物質は市販のフェロセンを用い、三段階の反応を経てスルホンアミド基の導入に成功した。このスルホンアミド基の特徴は、Ortho-Directing Groupとして高効率でオルトメタル化反応が可能であること、さらに還元反応によりチオール基への変換が容易であることである。この置換基により、オルト位への選択的リチオ化が可能であり、単一シクロペンタジエニル環上の2位へ硫黄原子の導入に成功した。次に、スルホンアミド基を還元反応によりチオール基へと変換し、非常に酸化され易いチオール基を、ジメチルスズにより保護した。さらに、硫黄源となる親電子試剤として二塩化硫黄を作用させ、ペンタチエピン縮環分子を合成した。この結果は、系中に発生したスズ化合物がルイス酸として作用し、環拡大反応が進行するものと考えられる。また単結晶の育成に成功し、その分子構造も明らかにした。これはフェロセンの単一シクロペンタジエニル環上に、環状硫黄部位を導入した初めての例である。一方、先の合成法を改良することにより、二つのフェロセン環を架橋したテトラチオシン、ジチイン誘導体の合成、構造解析にも成功した。また、合成した分子群の電気化学的特性をサイクリックボルタンメトリーにより評価し、金属中心と有機部位の双方の独立した酸化還元特性の発現に成功した。
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