研究概要 |
有機化合物の絶対構造を非経験的に決定する方法として、X線法とならんで円二色性(CD)スペクトル法が有用である.我々は発色団間の励起子相互作用円二色性を利用した「CD励起子カイラリティー法」を開発確立し、多くの天然物や理論的に興味ある合成有機化合物に適用して、その絶対構造を決定してきた.この方法は他の研究者によって種々の天然有機化合物に使われ一般化されている.また、我々はこの方法の拡張として本研究において、「ねじれたパイ電子共役系」の絶対構造決定にパイ電子SCF-CI-DV分子軌道法によるCDスペクトルの理論計算が非常に有用であることを見いだし、天然物や理論的に興味ある合成化合物の絶対構造決定に応用した.「ねじれたパイ電子共役系」としてキラルフラーレンやアトロプ異性によってキラリティーを持つ天然物や合成物の研究を行った.フラーレンの2ケ所に付加反応を行ない,フラーレン骨格にキラリティーを発現させ、これらの光学活性体の分離と円二色性スペクトルの測定を行った.その結果,非常に強いコットン効果を示し、そのパターンは付加様式によって大きく異なっていることを明らかにした.また同時に,分子軌道法によってこれらの円二色性スペクトルを予測し,実測と比較することで非経験的に絶対構造の決定を行うことが出来た.
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