研究概要 |
まず、立体保護された3,4-ジホスフィニデンシクロブテンの1,2-位に6〜8員環が縮環した形の縮環型ジホスフィニデンシクロブテンを合成し、パラジウムあるいは白金キレート錯体に変換した。ここで得られた縮環型化合物および錯体についてX線結晶構造解析を検討したところ、1,2-位の置換基とリン原子上の立体保護基との立体反発の度合によって構造および配位能力に大きな違いがでることが示唆された。さらに、1,2-位に4-(4-ビニルフェニル)ブチル基を有する3,4-ジホスフィニデンシクロブテンを合成し、ポリマーに変換した。得られたポリマーにパラジウム錯体を作用させたところ、金属錯体ポリマーと思われる固体が得られ、これはほとんどの有機溶媒に不溶であった。前述のポリマーのリン・炭素二重結合まわりの幾何配置は(E,E)-型を保っていると考えられるが、光を照射すると一部(E,Z)-型に変化した。かさ高いシリルホスフィドとベンゾイルフェロセンとの反応では対応するホスファアルケンは得られなかったが、フェロセンカルボキシアデヒドとの反応ではホスファアルケンを得ることができた。また、2,4-ジ-t-ブチル-6-メトキシフェニル基および2,4-ジ-t-ブチル-6-(ジメチルアミノ)フェニル基を有するホスファアルケンを合成した。これらホスファアルケンの、置換基による安定性の序列はジチオキソホスホランの場合と大きく異なっていた。これら置換基はジチオキソホスホランに対しては安定化に働くが、ホスファアルケンに対してはむしろ求電子試薬との反応を促進する活性化基として働くと考えられる。さらに、2,4,6-トリ-t-ブチルフェニル基の一方のο-位をイソプロピル基に変えた置換基やメトキシアルキル基を導入した置換基を開発し、それら置換基を有するジホスフェン類やジチオキソホスホラン類を合成した。
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