研究概要 |
1)金属イオンの特異な配位結合場を利用した高スピン有機ラジカル金属錯体の創出 Cu(I)イオンに二つのイミノニトロキシドが配位した錯体[Cu(I)(impy)2](PF6)においては,金属イオンとラジカルSOMO間のMLCT相互作用により強い強磁性的相互作用が働く(J=56cm^<-1>).そこで,本研究では多座配位架橋配位子として働くポリーピリジルタイプのビラジカル配位子を合成し,これらビラジカルをCu(I)イオンで集積させることにより有機ラジカル高スピンクラスターの合成を目指した.しかしながら,Cu(I)錯体は合成できなかった.そこで,Cu(I)イオンの変わりにCu(II)イオンをもちいることにより,Cu(II)イオンと有機ラジカルの間に強磁性的相互作用が働き,高スピン状態を基底状態にもつ高スピンクラスターを合成した. 2)LMCT相互作用による基底スピン多重項分子の創出 三座配位シッフ塩基をもちい鉄イオンを集積化すると,鉄(II)イオンが結合角90゜で架橋され,金属イオン間に強磁性的相互作用が働くことを見出した.これは,架橋酸素原子と金属イオン間のLMCT相互作用により分子内強磁性的相互作用を誘起するためである.本研究では,この架橋配位子を化学修飾することによりS=8の基底スピン状態を持つ鉄(II)4角錯体を合成することに成功した.
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