研究概要 |
MgNiならびにMgPd合金について,合金中のプロチウムの占有位置,化学結合状態,物性の変化等を計算し,両合金のプロチウム貯蔵特性の違いの原因を,理論的に明らかにすることを研究目的とし,完全な第一原理計算であるFLAPW法を用いたシミュレーションを行った.プロチウムが固溶する格子間位置としては,格子の<100>方向にプロチウムを動かすことによって,x=0のOsite(4Ni/Pd-2Mg)から種々のTsiteを経て,x=0.5のOsite(4Mg-2Ni/Pd)に至る各格子間位置での計算を行った.いずれの計算においても,結晶格子内の個々の原子の相対位置を固定して,内部エネルギーが最小となる格子定数を求めるとともに,その微分から体積弾性率を評価した. 計算により得られたプロチウムを固溶していない格子定数は,実験値に極めて近い値となっているプロチウム吸蔵の化学反応式,MgNi+1/2H_2→MgNiHに伴う内部エネルギー変化を検討した.両合金ともに,最隣接原子として4個のMgを有するOsiteが一番安定な構造となっている.本構造において,MgNiHでは,プロチウム1個あたり-35.9kJ/molの発熱反応である.MgPdにおいては,4個のMgを有するOsiteにおいても,プロチウム吸蔵反応は吸熱反応であり,単体の金属間化合物としては,プロチウム吸蔵の可能性の極めて低いことが,理論的に示された.両合金ともに,内部エネルギー変化が負値に近づくにつれて,体積弾性率は上昇する,プロチウム吸蔵反応が発熱反応の場合には,プロチウム吸蔵後の体積弾性率は上昇し,よりタイトな結合が生成することを示している.プロチウム吸蔵の前後でのDOSの変化をみてみると,合金中へのプロチウムの固溶によって,低エネルギー側にプロチウムに起因した状態密度が出現しているが,プロチウムと金属原子との相互作用がMgNiとMgPdでは異なっていることが明かとなった.合金のプロチウム貯蔵特性は,遷移金属のd電子により大きな違いがあることが明かとなった.
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