研究概要 |
準結晶は,一般に,水素に関して化学親和性の低い成分元素で構成されているので,水素吸蔵特性に関する研究は今まで行われてこなかった.しかし,最近,液体急冷法により作製されたTi基の準結晶合金が水素化物を形成することなく61.5at%程度の水素を吸蔵することが報告され,準結晶の水素吸蔵合金としての可能性が示唆されている.本研究では,メカニカルアロイングによる準結晶の生成が報告されていないTi-Zr-Ni系の混合粉末に注目し,その混合粉末のメカニカルアロイングによる合金化,さらに,その後の真空熱処理を行ってメカニカルアロイングによる準結晶粉末の作製の可能性を調べた.そして,得られたメカニカルアロイング粉末に高圧ガス容器を用いて水素を導入し,メカニカルアロイング粉末の水素吸放出特性を評価し,高密度プロチウム新規材料としての準結晶粉末の可能性を探索することを目的とした. 実験の結果,Ti_<45>Zr_<38>Ni_<17>混合粉末のメカニカルアロイングはアモルファス相を生成するが,その後,773K以上で十分な真空熱処理を行うことにより正二十面体準結晶相(i相)が形成されることが分かった.また,メカニカルアロイング後のアモルファス粉末とその後の熱処理を行って得られた準結晶粉末の水素吸蔵量(温度573K,初期水素ガス圧3.8MPa)は水素吸蔵合金としては良好で,どちらも構造には依存せず,約60at%([H]/[M]≒1.5)を示した.水素吸蔵後,準結晶粉末は安定に存在するが,アモルファス粉末は(Ti,Zr)H_2水素化物へ相変化した.このことに起因して水素の放出はアモルファス粉末より準結晶粉末で比較的容易に生じることが明らかとなった.以上のことから,Ti-Zr-Ni系準結晶粉末は,高密度プロチウム新規材料として可能性があることが示唆された.
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