研究概要 |
金属錯体の集積には,(1)共有結合,(2)弱い相互作用,を利用するのが一般的である。弱い相互作用は簡便に使えるが,しばしば意図した設計と異なる結果を示すことが多い。構造および強さ特異的な相互作用を利用すれば意図した設計が容易に可能になり,利点は大きい。構造および強さ特異的な相互作用を利用した分子設計による金属錯体の集積,構築への展開を意図し,機能を有する金属錯体の開発を試みた。 1.高い構造特異的を有するグアニジニウム-グアニジニウム基相互作用(水素結合)を銅(II)-アルギニン錯体系のpH滴定により見出し,温度可変実験から高温ほど相互作用が有利になる通常とは異なる特性を明らかにした。この特異的水素結合により,白金(II)-フェナントロリン-アルギニン錯体が水溶液中で特異的に集積することをH-1NMRシフトから明らかにした。 2.銅亜鉛酵素スーパーオキシドデスムターゼSODの反応性モデルとしてイミダゾール環を初めて導入した異複核錯体[CuZn(bdpi)(CH_3CN)_2]^<3+>を合成し,構造を決定し,錯体化学的性質を調べた。そのSOD活性(IC50)はこれまで報告された銅亜鉛異核錯体のなかで,最も大きな活性を示し,機能発現に配位圏における特異的な弱い相互作用の導入が効果的であることを見出した。 弱い相互作用は生体系にあっては,種々の機能発現の原動力となっており,特異的な相互作用を用いて構築された集積型金属錯体は優れた機能を示すことが判明した。
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