研究概要 |
本研究では,二分子のTTFが融合したTTPを配位子に含む各種金属錯体を合成し,それらを用いた新規な分子性導体を構築することを目的としている。TTFジチオレートを配位子に含む金属錯体では,TTFを含むものよりも分子間の有効な重なりが期待されるため,より高伝導性の錯体が得られることが期待される。様々な金属を持つTTPジチオレン錯体の合成を試みた結果,銅を中心金属としたビス(TTPジチオレン)錯体をヘキシルアンモニウム(THA)塩(THA・Cu(ttpdt)_2)として,白金を中心金属とした非対称錯体を中性錯体Pt(ttpdt)(bpy)として単離することに成功した。得られた錯体のうちPt錯体Pt(ttpdt)(bpy)の電気化学的性質をCV法により検討したところ,3対の不可逆な酸化還元波が+0.18,+0.71,+1.11V(vs.SCE in PhCN)に観測された。各段階のピーク電流値の比較から最初の2段階は一電子移動,最も高電位側のピークは二電子移動に対応すると考えている。TTM-TTPの第一酸化電位が+0.53V,Pt(etdt)(bpy)が+0.20Vであることを考えると第一酸化で生成した陽電荷は主にジチオレン部および隣接した1,3-ジチオール環に分布しているものと考えられる。THA・Cu(ttpdt)_2およびPt(ttpdt)(bpy)の誘導体をTHF中NO_2SbF_6を用いて酸化させることにより,銅錯体については中性錯体が,Pt錯体についてはそれぞれをドナーとするSbF_6塩が得られた。これらの物質の加圧成型試料における伝導度を四端子法により測定したところ,Cu(ttpdt)_2錯体は中性にしては比較的良好な伝導性(σ_<rt>=10^<-2>-10^<-3>Scm^<-1>)を示した。一方,Pt(ttpdt)(bpy)のSbF_6塩は1:1塩であるため室温の伝導度も10^<-3>Scm^<-1>程度と低く,活性化エネルギー(E_a=0.16-0.20eV)も高い値であった。上記の結果をまとめた論文については投稿準備中である。
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