本研究では、π-共役系分子間への金属の集積によるサンドイッチ型有機金属化合物の合成と機能解明を目的とした。π-共役系分子としては1次元拡張構造を持つπ-共役ポリエンを、金属としてはパラジウムを用いた。 本年度の結果として、広範な用途に利用可能なパラジウム-パラジウム結合を持つパラジウム二核錯体を合成する方法を確立した。この錯体は、解離性の高いアセトニトリルのみを配位子として持つため、裸の二核パラジウム原料として種々のパラジウム二核錯体への前駆体となることがわかった。この二核錯体を原料とし、パラジウム0価錯体、共役ポリエンとのワンポット反応によって簡便に目的サンドイッチ鎖化合物が高収率で得られることが判明した。ジフェニルオクタエン7核パラジウム錯体までの長さを持つ鎖分子の合成に成功した。 また、サンドイッチ型錯体とハーフサンドイッチ型錯体との化学的相関を明らかにするためにジフェニルトリエン二核パラジウム錯体を用いて、可逆的変換反応を詳しく検討した。その結果、サンドイッチ型錯体とハーフサンドイッチ型錯体間の相互変換は溶媒の選択により温和な条件で定量的に進行することを明らかにした。その可逆的変換過程において、ジフェニルトリエンの立体化学は保存されることも証明し、パラジウム-パラジウム結合及び開裂過程が関与する反応機構を提唱した。また、サンドイッチ型、ハーフサンドイッチ型錯体のX線構造解析を行い、両者間の構造的差異を明らかにした。
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